【はしづめも】『君たちにしか出来ないことをやれ』(茂木健一郎 2016/03/02)

最も大きな変化が起こる

これから5~10年で、人類が生きてきた中で最も大きな変化が訪れる時代になる。5年後、10年後、君たちの労働環境がどうなるかは、正直わからない。

賢いことに意味がなくなる

例えば君たちの中で賢いことを自負してるやつがいるだろう。でも、人工知能が発達するということは、賢いことに価値がなくなる、ということなんだ。そのことをよく考えたことがある?

お医者さんより人工知能の方が知識があるようになる。おそらく今まで見逃されていた疾病はたくさんある。

他人のために何が出来るか

これからの世の中どうなるんだろうって、不安だと思う。自分は生きていけるのか。ちゃんと暮らしていけるのかぼくの所にこんな若者が来る。

「茂木さん、オレ、そのうちビッグになるんで見といてください」

そういうやつでビッグになったやつ、見たことないんだよね。なんでかっていうと、君たちぐらいの時って、自分がやっぱり一番精一杯なんよ。なんとかして自分が生きていきたいと思うわけじゃん。ね。

ところが、人間って面白くて、発想を変えないと生きていけないんすよ、この世の中って。

自分は他の人のために何が出来るんだろう、って発想を変えた時に、初めて道が開ける。自分って世の中に1人しかいないだろう。だったら、自分のために、って一人分のエネルギーしか出ないじゃん。みんなのために、って言ったら、みんなは世の中にたくさんいるじゃん。だから沢山のエネルギーが出る。

みんなのためにやる時、他人が見えないといけない。

自分の好きなものは知ってるでしょ?世の中には君たちとは違う思考性を持って、悩みを持っている人がいます。そういう困った人たちがいるときに、君たちはその人達に何が出来るんだろう、って発想を変えて、他人のためにがんばると、世の中は「ありがとう」と言って、君たちの所にものをかえしてくれる。

君たちにしか出来ないことをやれ

人工知能と他人のために何かをする、の間には深い相関がある。それが、君たちが働く中で見つけていく、一番おもしろいことさ。経済の中で生きる、ってこと。経済は面白いぞ。マーケットって面白いぞ。

沢山供給されたら、物の価格って下がるよね。じゃあ、君たちが、世の中の人に役立つ人になるためにはどうなればいいんだ。コモディティ化しちゃいけないんだろう。

君たちにしか出来ないことをやればいい。これは誰でも出来る、のであれば、君たちのもらう賃金は下がる。これはこの人にしかできません、っていうと、じゃあ少しでもお金出すからやってください、ってことになる。

ここからが一番のポイントなんすけど、人工知能の発展によって、何が市場の中で希少なもので、何が有り触れたコモディティであるか、ということが、変わるということです。これから。ここにこれから君たちが働く世の中を理解する最も大きな鍵がある。

勉強が苦手だったやつは安心しろ

ぼくは日本の偏差値入試にずっと批判的です。君たちの中には京大も福岡大もいるけど、俺の中ではそれぞれの大学の偏差値なんて、まったく興味がないし、そんなことで人間は評価しません。そのような能力はこれからまちがいなくコモディティ化していく。

センター試験のような学力検査をこなすことが出来る人工知能がこれから出てきている。東大入試に受かる人工知能が出てきている。人工知能が受かる能力に価値があるのか、っていったらないだろう、もう。

っていうことはさ、安心しろ。君たちの中で勉強が苦手だったやつ。大逆転だよ。京大の奴、お前らのアドバンテージはこれから減っていく、ってことだよ。どうする?

あのさ、マーケットっていうのはそういうもんなんだぞ。昔は大学卒は希少財だからチヤホヤされた。今は大学行くだけでは保障にはならない。それは厳しいようだけど、こんなおもしろいことはない。

ブルーオーシャン

人工知能が幅を利かす時代に、人間はどういう付加価値を作れるのかな?

これってブルーオーシャンの話なんだよね。ブルーオーシャンっていうのは競争相手がいない。例えばiphone。この便利なiphoneは出た時ボタン一個だったんだよ。ジョブズがボタン一個にした時の驚き。これが当時はブルーオーシャンだった。今はスマホがたくさんあるけど。

じゃあさ、君たちはどうしたらコモディティティ化できないのか。

世の中の動きをほんとによく見てないとだめだぜ。「俺の~」ってなんなの?「いきなりステーキ」あれってなんなの?経済の中で斬新な影響を与えているわけじゃん。ブルーオーシャンなわけさ。経済っていうのはそうやっていつも動いてるんだよ。面白くない?

世の中で困ってることは何?

君たちによく考えてもらいたいのは、世の中で困っていることとか、必要なことってなんなのかを考えてほしいんだよね。

人工知能を使って君たちがどういうソリューションを提供できるのか。こんな面白い事ないじゃん。いろんなオポチュニティがあって、そこで君たちがやるべきことは、どうしたら他人のためになれるのか、ということ。

わかるよ、君たち。恋人が欲しいし、デートがしたい。気持ちはわかる。不安だよね。私食べていけるのかな、とか。人間ってさ、自分が食べる、恋人が欲しい。その不安から守りに入る。わかりますよ。

全方位な人になってほしい

だけど、騙されたと思って、他人のために何ができるのか、をやったら、すごく楽しい人生が間違いなく待っています。その時に、一つはグーグルみたいな先端企業の動向、もう一つは、まちを歩いて、まちの雰囲気、あとは世の中の人が何に困っているのか、それに目を配れるような、全方位な人になってほしいな、と思います。

実践的なアドバイス

  • 会社に入ったら、先輩に可愛がられるような人になったほうがいいよ。君たちまだ何もしらないじゃん。戦力にすぐにはならない。コバンザメになる。先輩についていって、素直に教えてもらう。可愛がってもらえる、というのは色んな意味で得。「この人」と思える先輩についていって、その人と時間を共にすること。
  • フローを覚えてほしい。働くって辛いんだろうな、っておもっちゃいがちなんだけど。実は、集中して最もパフォーマンスがあがる状態というのが、脳にとっては一番楽な状態なんすよ。それをフローと言います。フローというのは楽な状態。フローに入ると、集中してリラックスして時間が経つのを忘れて、仕事自体が報酬になる。仕事自体が目的になる。フローになるためには、自分のスキルと課題が一致すること。ということは、君たちは社会人なり立ての頃はスキルが足りないから、フローにすぐには入れない。じゃあ、どうしたらフローに入れるのか、というと、スキルをあげていくしかない。でもね、楽しいもんだよ、フローに入って仕事をするのって。
  • 自分を見つめてほしい。人間の脳で一番素晴らしいのは個性。個性と言うのは欠点と長所が表裏一体になったものです。その個性を見つけるというのが、君たちの最大のテーマ。そして、君たちの個性を写してくれるのは他人です。見かけは鏡を見ればわかるけど、自分の個性は他人と言う鏡をとおしてでしかわからない。なので、これから君たちがこれから出会う様々方に移る自分の姿を、他人によってうつる姿が違うからね、そういう自分の姿を見ながら、自分の個性と言うものを、欠点・長所を含めて、まるごと受け入れていけるような、そういう人になってください。