11月13日に京都の伏見に行きました。
靴屋 楽ちんの店主・トムこと小林茂さん(52)さんの動画を制作するためです。今日が12月25日なので42日も前のことですね。
普通、11月13日に撮影したとしたら、翌日の14日か15日には編集を終えて公開するのがぼくの動画の作り方です。
今回もいつも通り、撮影を終えた翌日の11月14日には、さっそく編集を8時間ぐらいぶっ通しで取り組みました。
しかし、家に帰ってきた妻にその動画を見せると「つまらない」と一言。
ぼくの妻は対象を客観的に批評する力を持っているので、素直にそのアドバイスを聞き入れて、15日は急遽、トムの奥様と息子さんの撮影も依頼。
京都に再び向かったのでした。

トムは『靴屋 楽ちん 京都伏見店』を営み、奥様は『靴屋 楽ちん 京都三条店』の店長をしています。

息子さんは大学3回生で就職活動が始まっています。
こうしてトムに加えて⇒奥様⇒息子さんと取材を終えました。しかし、編集を再開するどころか、40日間、ずっと作業は一旦停止していました。都合良く言えば、熟成でしょうか。
ちなみにこの時、ぼくは自分に対してなるべく罪悪感を持たないようにしています。
「はやく作らないと」「トムが待ってくれているし」などの気持ちが無いことはないのですが、その感情がメインで動画を作っても良いものは創造できない、と考えているからです。
必ず、タイミングがやってきます。
そして今朝、ふと「取材動画がみたいな」と思ったので、そのままパソコンに向かいました。
息子さんの取材を見終えて、彼に「お父さんの仕事姿を伝えたい」と思いました。
動画を見ていて、トムが息子さんにあまり自分の仕事を伝えていないのでは、と感じたからです。その瞬間、動画のテーマが決まりました。
テーマが決まると、そこに必要な映像と不必要な映像が自然と選別されます。結果、今回の動画では2日目に撮った奥様と息子さんの動画は使いませんでした。
※ 一年後になるかもしれませんが別のテーマでもう一作品作る予定です。奥様、ひかる君、もうしばらくお待ちくださいね。
動画の輪郭は定まりました。そして、今日、一日かけてノンストップで編集をしました。帰ってきた妻に見せると「面白かった」と一言。
興味深いのは、一か月前に作った一回目の動画も今日作った二回目の動画も素材自体は同じ日の映像を使用している、ということです。
しかし、妻曰く、一回目と二回目では「人が違う」とのこと。全く同じ人で同じ時間に撮ったのにも関わらず、です。
この違いを分析するに『テーマの違い』があげられます。
テーマは、一回目は『16年続けた靴屋の新たな分岐点』という切り口で作っていました。これまでやってきたことと、これからやろうとしていること・・・。そこにトムの葛藤や希望も混ぜながらの動画でした。
対して二回目のテーマは『トムの仕事』(子どもに伝えたい)。シーンごとにテーマに合わせた音楽(BGM)を装飾することで、伝えたいことをより強調させています。
トムを取材した当初は『トムの葛藤と希望』に興味があり、今は『トムの仕事をする様』に興味があった。その興味の違いだけで、全く違う動画が出来上がった。
つまり、何が言いたいかというと、ぼくたちは『あの人は明るい』『あの人は暗い』みたいな言い方をすることがありますが、それは結局のところ『編集』だ、ということです。
意味わかりますでしょうか?
人間には絶対的にポジティブもなければ、絶対的にネガティブもない。希望や不安、苦悩や快楽を抱えながら生きています。
その要素のどこを切り取るかによって、見え方は変わってくる。そんなことを、トムの動画を撮ることによって、改めて気づかされました。
トム、お待たせしました。そして、奥様、ひかる君、次回作までもうしばらくお待ちください。というわけで、長くなりましたが、トムの動画を紹介します。
『足に合った靴を履くことが大切!靴屋・楽ちんを取材』
2001年に京都の伏見で創業してから16年間で約1万人の足型をとり続けてきた、靴屋 楽ちん 代表の小林茂さんの新しい取組である【出張・足型測定&履き合わせ】を取材しました。
公開日:2017年12月25日
★ 橋爪大輔 ★
ドキュメンタリー作品