「動画は色んなものがさらけ出るので、ただ一つ、【嘘をつかない】だけ気に留めてもらえれば」
去年の9月。
そう伝えて、大阪市東淀川区にある肴小料理屋『侑歩(ゆうほ)』を一人で営む、みっちゃん女将こと小石美知子さん(46)の密着ドキュメンタリーを撮影した。
早朝5:30。
小雨の降る中、木津市場で魚を仕入れるみっちゃんと初対面。
本当は、8月にグッチが開催した『中村文昭講演会』で、みっちゃんとは出会っているのだけれども、その時は、ぼくがみっちゃんを認識していなかった。
グッチのドキュメンタリーを公開すると、みっちゃんはFacebookに「ぼくとスコップに会いたい」とコメントをくれた。
『会いたいと言われたから会いに行く』
最初はただそれだけの理由で撮影した。
さて、みっちゃん女将と早朝の市場で対面したぼくは、みっちゃんが抱えるもの(そこに言葉を与えるとしたら)葛藤のような、寂寥のような、そういう感情に触れたような気がした。
「それ」を見なかったことにして、みっちゃんの陽の部分のみを切り取り、動画にすることも出来る。しかし、それなら情報番組の食レポと同じだ。
みっちゃんの持つ陰の部分も陽の部分も対等にすくい取るからこそ、人は共感を持つだろうし、応援したくなると思う。
もちろん撮影している時は、そこまでの確信は思っていなかったのだけれども、直感的に「陰を撮りたい」と思ったぼくは、みっちゃんと会話を続けていく中で、徐々に彼女が抱えていることに迫っていった。
すると、今までずっと大きな声で喋っていたみっちゃんからは想像も出来ないほど小さな声を聴くことが出来た。それは動画に残っている。
そんな、みっちゃん女将の『今』を、今日、再び撮りに行くことになった。
みっちゃんが今、何を考えて、どこに進もうとしているのかを、観察してこようと思う。
そして、もう一つ、楽しみなのは『Iris underground』のニシカワヒサコさんという存在について。
SNSでその名前はチラチラと見ている。人の心を打つ歌を唄う方なのだろうと思う。ぼくは今日初めて聞くから楽しみということもある。
そして、何より、おそらくなのだけれども、ぼくの予想が正しければ、ぼくはニシカワヒサコさんともう既に喋っている。
グッチのドキュメンタリーを8月に撮影した時、おそらくニシカワヒサコさんはカメラマンとしてそのイベントに参加していた・・・ような気がする。
そして、ヒサコさんにぼくはインタビューした。
その時に『ぼく』が持った印象と、SNSで絶賛されている状況にやや乖離したものをぼくは感じている。
誤解をおそれずに書けば、ぼくはインタビューしながら彼女に『陰』の部分を感じた、ような覚えがある。
しかし一方で、人が誰かを絶賛する時、そこには必ず何かしらの『陽』の部分が存在する。
その二極が一体何なのか、これが、ぼくがニシカワヒサコさんに対する好奇心だ。
ニシカワヒサコさんがInstagramに書いたみっちゃん女将に対する文章を引用する。
みっちゃん。
2月のオーナー。
想像以上の頑固さん。
想定外の天使さん。
しっちゃかめっちゃかで
イライラする。
イライラする。
というのはその中に自分を見ている。
彼女にしか創れないライブがある。
しっちゃかめっちゃか過ぎて
タイムロスした。
その船は沈むかと思った。
初めて、開催中止がよぎった。
その船を引っ張りますという
人があらわれた。
「みっちゃんが好きだから」
なんということでしょう。
陸が見えてきた。
それぞれが
それぞれのライブを生きる。
赤裸々な魂のダンス。
まもなく。
★
やっぱりこの人、面白そうだ。