集中して作業しよう

ダラダラすることにも飽きてきて、かと言って自宅では子供二人が縦横無尽に騒いでいる為、集中して仕事も出来ないので、今日は妻に自宅を任せて、阿倍野のスターバックスコーヒーまでやってきた。

店内は、ぼくと同じようにノートパソコンで動画編集をしているクリエイターの人や、何やら本を読んでノート作りをして勉強している学生さんなど、さながらコワーキングスペースのような雰囲気になっている。

ぼくはイラストレーター華鼓さんの新作絵本『天の使い』のドキュメンタリーを作ろうと思ってやってきた。

これまでに、名古屋、福岡、東京で撮影をした。絵本に登場する龍をモチーフにした指輪を作られたジュエリー職人の方。絵本を印刷された印刷所の方。絵本に言葉を吹き込んだ作家の方。

一つの絵本が出来上がる時に、これだけの人がこんな想いで関わった。それを映像で共有したいなーと思ったから作っている。この動画をきっかけにして、絵本や指輪の存在が一人でも多くの方に知られて、必要とされる方々に届いたら嬉しい。

これは仕事ではなく、自分が「やりたい」と思ってやっている。だから、締切も特に設けられていない。自分のペースで伸び伸びと作れるのが嬉しい。

動画編集はパソコンがあれば、何処でも作業できるのも良い。数年前から遊びで始めて良かったなーと思う。

ということで、14時ぐらいまで集中して作業しよう。今は撮影した素材の文字起こしにひたすら取り組んでいる。こんな感じ。

★★★

近藤さんとの出会い

前作(『空へのノート』)が終った時に、テーマだけ決めていた。本の装丁の仕事(『ドラゴンゲート』)で龍を描くことが多かったから、自分の作品で書きたかった。

近藤さんの展示会に遊びに行った。まだ面識はない。友達の作品を観に行って。その場所に友達がおらず、近藤さんと話をした。

近藤さんが「デザインでずっと龍を作りたかった」という話を伺って鳥肌が立った。「次は私も龍を描きたいんです」。じゃあ、ぜひ一緒にやりましょう。怖くならないように、可愛くならないように、という点で一致してハマったと思う。

★ 絵本『天の使い』について

最初から「心龍リングの龍の後ろにある物語も届けないといけない」と思っていた。それはただのモノとしてではなく、物語を持っている龍をお届けしたかった。だから、絵本という形はどうしても必要だった。

ジュエリーデザイナーではないので、指輪作りに関わる意味を作りたかった。でも、物語自体はまだなかった。

愛のお守りとしてリングを作って、その後、どこのシーンを絵本でチョイスするか。それは絵本を作る時に考え始めた。

物語は漠然とはあった。二人の出会いから始まって永遠の会いに繋がる。でも、そこではなくて、絵本になった時は「受け継がれるもの」。その愛について考えてテーマが変わった。

受け取ったものと、受け渡したいもの。

この指輪は二人の出会いから始まって、この人生の中で創り上げていく課題や祈りをお守りにしたもの。出会いがあって、好きになって、護るものがあって、繋がって行く、ということではなく、私自身が受け取ったものと、私自身が残したいものにフォーカスした。

現実は反抗期の子供に「うぜぇ」とか「クソばばあ」とか言われながら本を作っていた。でも、子供達に残したい、という気持ちで作りました。

★ ことばが織田道代さん

全く違和感がなかったのが最初の印象。平面だったものが、言葉によって何倍も膨らむんだ。言葉の魔法って凄いな、って感じました。

龍を主人公にして絵本を作っていたのが、天使からの視点を入れてもらったり、天使に思い入れを持って読むことが出来るようになった。

★ 活版印刷の山田さん

福岡の文林堂の山田さんと言う職人さん。私はモノクロの印刷を普通に出したんですけど、山田さんが「スミレ色の本にしませんか?」。

80歳を超えたお爺さんですが、山田さんに菫色って言われたらキュンってなってしまって。「お金祓うのは私だけどなー」と。10万円ぐらい高くなってしまう。でも「その夢、買いましょう」となった。

「龍も天使も花も、皆一緒の花園みたいなイメージにしたいんです」って言って下さって。そんな風にお願いされたら、もう「ぜひお願いします」と言いました。

★ 今の気持ち

自主制作にも関わらず、編集をしてくれた金沢さん。講談社で編集長をされていた御方。仕事を一緒にしたことがないけど、ずっと気にかけて色々な方を紹介してくれていた。本当に幸せ。1人でも多くの方に大事に届けて行きたい。

龍が使命に気づけずに迷う。苦しい時間を悶々と過ごす。天使と出会い、目覚めて行く。龍神であっても迷う。皆、一回しか生きられない時間をどう使うか。その時に背中を押せる本でありたい。それぞれの花を咲かせて欲しい。

嘉匠 近藤さん インタビュー

龍のデザインは難しい。おどろおどろしい龍はつけると怖い。漫画チックな可愛い龍もお洒落じゃない。だから手を出せずにいた。良い龍が出せずにデザインに行き詰っていた。

「龍良いよね」とずっと思っていた。龍のデザインは難しいな、といつも思っていた。良いデザインがなかなか難しいから、みんな出来ずにいる。怖い龍になりすぎるとつけるのに抵抗がある。漫画チックじゃなくて怖くない、ちょうど良いデザインにするのが難しい。

華鼓さんと出会ったから「これは良い龍がいけるかもしれない」。創るのを辞めようかな、と思っていたところを、逆に華鼓さんと出会ったおかげで、実現出来るかもしれない。良いアイデアを華鼓さんがくれたら、それを形にしていけばいい。

それで「納期無し」で出来たら会いましょ、になってほったらかし。それで一枚の絵がきた。最初はこの案ですよね。もう凄すぎるじゃないですか。

ぼくたちでは到底出来ない絵でしょう。素敵すぎるんですけど、これをジュエリーに落とし込むなんてとんでも難しい複雑なデザインも含まれている。

これをジュエリーに落とし込むのは技術的に限界がある。ということで、このイメージでもっと落とし込みやすい簡素化した図案を華鼓さんにリクエストしました。

それであがったのが、この絵のモチーフです。ここまできたらジュエリーに落とし込みやすいデザインにきたので、男性も女性も装着しやすいモチーフですよね、と言いながら、最初に作ったのがベースありのデザイン。

ちょっと面白くないな、ということで、ベースを無しに変わった。ここまで行くのに今回は凄くかかりましたよね。難しいんですよ。世に出ているジュエリーと複雑さが違うので。原型を作るのに二か月ぐらいかかったかな。

ドラゴンは宝石を持っているんですけど、井出さんが思うほ宝石を用意して石止めします、ということでさせてもらった。オパールとブラックダイヤモンドが井出さんのイメージに合う。その2つの宝石でスタートしている。

※ 今は誕生石で別注して欲しいという方も増えている

いつもはファッションリングをメインで制作しているんですけど、そういうのは流行で廃れるデザインもあるんですよ。せっかく一生懸命原型を作ったけれども、五年後には「あのリング古いよね」となってしまうものも結構ある。

それに対して龍はジュエリーの中で永遠のモチーフなので、原型を創るのは大変だったんですけど、これはもう何年先も古臭さがない。そういう指輪になった。

元々、ジュエリーはファッションの前にお守りから発祥しているので、そういったことを踏まえると、ドラゴンは最高のモチーフ。30年後も50年後も100年後も使える。

文林堂 山田さん インタビュー

菫色が良いのでは?と提案された意図は?

長年、印刷をしていて、色によって受け取るものがある。若い頃、活版印刷からオフセット印刷に変化した。活版の仕事は黒一色。殆どが色を使う事が無かった。オフセットは色を使って表現するのが増えてきた。それで色に関心を持つようになった。

マゼンタのインキを使うと深い透明感のある発色がある、というのを作業している時に思った。50年も前のこと。こういう色の使い方もあるのかと。その色自体がCGのマゼンタを主体にして使う色。綺麗な色だなーと思っていた。

仕事をしている中で、今回は鉛筆の作家さんは黒で書いているのに、ぼくの感覚で変える、というのは大変な事。華鼓さんにとっても黒で発表するのが当然のスタイル。ぼくの中で、これがどういう風に使われるのか?というのも大事な事。せっかく印刷したものが相手に伝わるか。

「プレゼントで使いたい」ということだったから。それで実際に見ると、本の大きさとか題材とか、開いてみると抵抗感があった。

華鼓さんは自信を持ってこれを世の中に出そうとしているけど、受け取る側が許容出来ない部分があるんじゃないかな、と。この絵本を買って、あの人にプレゼントしたい、という作者以外の受け取りて側の立場が大事じゃないかな、と思って。

その時に、40~50年も前に経験した衝撃じゃないけど、あの手の色を使えば花園みたいな感じで、イメージが拡がって行くのではないか。

光の色は外で見るか、中で見るか、あとはその人の状況ですよね。同じ色身でも一人一人違うように、同じ人が見ても、夕方見るか、朝見るか、どんな場所で見るかによっても違う。

そういうことを考えると、黒を使って出した時の受け取り方と変化の度合いが違う。カラーで刷ったらもちろん沢山の色があることはわかる。でも、一つの色なんだけど、それが色んな色に見えてくる。だから絶対に子の色しかない、という勧め方をした。これ以外考えられない、と。

菫色には見る人によって多様性が生まれる。

中間の所が黒く見えたり、逆に光のあて具合によって赤みが強く見えたり、青みが強く見えたり、不思議な色だなあ。

今回の『天の使い』は仕事をされていてどんな感覚でしたか?

しまいには「山田さんの本」って言われるぐらい、ぼくに責任があったわけですよ。凄いプレッシャーです。これでコケたらどうしよう、夜逃げせんといけんぐらい。だから、出来上がった時に一冊手に取った時の感触というのは「うわーこんなのが出来たのか」と。

やってみたかった仕事なんです。一つの賭けでしょう。誰もやったことがないのをやる。